はじめに


MEDALのインストール

まず以下の手順でMEDALをインストールします。

1)MEDALのダウンロード
MEDALをダウンロードします。http://www.image.med.osaka-u.ac.jp/member/reza/に アクセスし、[ Click here to download MEDAL ]のhereをクリックし,[ Download MEDAL] からPACKAGE-Medal-2004.exeをダウンロードします。

2)ファイルの解凍とインストール
ダウンロードの際、出てきたダイアログで実行をクリックっする。ダウンロード先はdefaultで表示されるCディスク上のMEDALそのままとする。使 用許諾条件が出たら「accept」をクリックして次に進んでください。

3)インストールの完了
インストールが完了すると「スタート」メニューとデスクトップにMEDALのショートカットアイコンが作られます。以後はこのアイコンからMEDALを起 動することができます。

MEDALの使い方

1)MEDALの起動と終了
デスクトップまたはスタートメニューのMEDALのショートカットを実行するか、インストールしたフォルダにあるMEDAL.EXEを実行するとMEDALが起動します。また、MEDALのメニューの[Exit]をクリックすると終了します。ただし、画像を1枚でも開いている場合は[Close]を押して画像をすべて閉じておかないと終了できません。

2)画像の読み込み、保存
メニューの[File] - [Open] - [***読み込みたい画像形式***] を選び、出てくるダイアロクで開きたいファイルを指定します。ふつうはこれだけで開けますが、[Non-graphical[including DICOM]]の場合はさらに開くためのオプションを指定しなければいけません。数値はいじらず「UNIXPic Image」のボタンをクリックして[Apply]を押せばOKです。また、[File] -[Save] - [***保存したい画像形式***] を選び、保存したいファイル名を指定すると、指定した形式で画像を保存できます。

3)MEDALの画像の内部表現
MEDALでは画像処理の手段が用意されているのは主にグレースケール、モノクロの画像です。そこで、開いたファイルはMEDALで処理できる形に変換してやらなければなりません。そのためには画像を開いた後、[Process]- [Convert BitMap Images to GrayPIC Images [and Close BitMap Images]] を選び、変換後のファイルを保存するファイル名を指定してやると、MEDALで処理できる形式に変換されます。一度変換した後は変換時に指定したファイルを[File]- [Open] - [Non-graphical [including DICOM]] - [Multi Slice] のあと、「UNIXPic Image」、「Apply」で呼び出すことができます。

4)フィルタを使った画像処理
A.平均値フィルタ
 メニューで[Image(s)Processing] - [FFTandFiltering] - [Average Firtering]を選ぶと平均値フィルタをかけることができます。
B.メディアンフィルタ
 メニューで[Image(s)Processing] - [FFTandFiltering] - [Median Filtering]を選ぶとメディアンフィルタをかけることができます。
C.ユーザー定義フィルタ
 メニューで[Image(s)Processing] - [FFTandFiltering] - [Arbitrary-2D Filtering[template:"MedalMainDirectory\Filter2D.txt"]] を選ぶとユーザー定義のフィルタをかけることができます。フィルタの内容はMEDALをインストールしたフォルダのPROGRAMサブフォルダにある”Filter2D.txt”の記述に従います。”Filter2D.txt”の記述方法はこちらを参照してください。

5)画像の重ね合わせ
重ね合わせの元になる画像を開いておき、メニューから[Image(s)Processing]- [Interaction of Images with Another Image] - [Add] を選び、重ねたい画像を指定します。このとき指定できるファイルは3)の処理で変換してあるファイルのみです。

6)二値化
メニューから[Image(s)Processing] - [Binarize Image(s) by Entering ThresholdValues] - [Do Binalize] を選ぶとグレースケールからモノクロに変換できます。このときの閾値は[Image(s)Processing]- [Binarize Image(s) by Entering Threshold Values] - [Parameter] のParameter1の数値で指定します。また、[Image(s)Processing]- [Binarize Image(s) by Histogram Analysis ] - [Do Binalize] で自動で閾値を選んで二値化することができます。

7)その他
・正規化
 メニューから[Image(s)Processing] - [Normalize Intensity Value of Image(s)] - [Do Normarize Images(s)] を選ぶと各ピクセルの明るさが一定の区間の間の数値に変換されます。その区間は[Adjust Normalize Low Value] と[Adjust Normalize High Value] で設定できます。
・メニュー一覧
 メニューの一覧はこちら。メニューは開かれているデータの種類によって変わります。

ここに示したのはMEDALの機能のほんの一部です。いろいろ試してみてください。

SAMPLE1

下の画像を例としてフィルタを使った画像処理について調べてみました。


原画像
線の太さは
 細:1PIXEL
 中:2PIXEL
 太:4PIXEL

まず様々な大きさのラプラシアン型ユーザー定義フィルタを試してみました。

3*3ラプラシアンフィルタ 5*5ラプラシアンフィルタ 7*7ラプラシアンフィルタ 9*9ラプラシアンフィルタ

フィルタの大きさによって最も強く検出される線の太さが変わることが分かります。3*3では太い線は内側と外側の2カ所で検出されてしまっています。逆に9*9では細い線はぼやけてしまいはっきり検出されていません。ここでは行っていませんが、適当な閾値を選んで二値化することである太さの線だけを取り出すこともできます。ここから、検出したい線の太さに応じた大きさのフィルタを使う必要があることが分かります。

次に、4通りの方向の二次微分型のユーザー定義フィルタを試してみました。ただし、フィルタの大きさは5*5としました。

5*5縦検出フィルタ 5*5横検出フィルタ 5*5斜め検出フィルタ1 5*5斜め検出フィルタ2

それぞれ特定の方向の線分を強く検出しているのが分かります。しかし、中間の太さの線分が強く出るのはラプラシアン型の時と変わりません。

さらに、この4種類の画像を重ね合わせると下のようになりました。

四方向合成 5*5ラプラシアンフィルタ

ノイズ(下の点):検出対象(線)の明るさの比は
4方向合成で230:209=1.10、ラプラシアンフィルタで255:212=1.20
4方向合成のほうがノイズが抑えられていることが分かります。
理論上では二次微分フィルタをかけた画像の各ピクセルの明るさを2乗した画像を作り、それを重ね合わせるとさらにノイズを抑えられることが分かっています。今回は2乗はしていませんが、それでも少しはノイズを抑える効果がありました。

医用画像への応用

人工画像のSAMPLE1をふまえて、医用画像への応用を試してみます。例として下の画像を使いました。

原画像

肺ガンにおいては、ガンを中心にした放射状の血管、気管の構造(spicular)が生まれます。ここでは、CT画像に対しての診断支援の基礎となる画像処理についてみていきます。

まずは大きさの違うラプラシアン型フィルタを4種類試してみました。結果は以下の通りです。

3*3ラプラシアンフィルタ
5*5ラプラシアンフィルタ
7*7ラプラシアンフィルタ
9*9ラプラシアンフィルタ

3*3ではいまひとつ線が強調されておらず、7*7、9*9では線がぼやけてしまっています。そこで、これ以降の検討においてはすべて5*5のフィルタを使うことにしました。

つぎに、人工画像の場合と同様に4種類の方向性二次微分型フィルタの出力結果を重ね合わせて単なるラプラシアン型の場合と比較しました。

5*5ラプラシアンフィルタ
5*5四方向合成
5*5ラプラシアンフィルタ二値化(閾値:117)
5*5四方向合成二値化(閾値:128)
5*5ラプラシアンフィルタ二値化(閾値:110)
5*5四方向合成二値化(閾値:118)

フィルタの出力では四方向合成のほうが線のコントラストが強いような印象も受けますが、今ひとつよくわかりません。それぞれを適当な閾値で二値化すると下のようになりました。ノイズがほぼ同じ程度にでるように閾値を調節してありますが、やはり四方向合成の方が線ははっきりしているようです。また、肺の輪郭はラプラシアンフィルタではほとんど検出されていないのに対し、四方向合成の方ではよく検出されています。気管の線の検出の差は分かりづらいですが、下に拡大した部分では比較的差がはっきりしています。

5*5ラプラシアンフィルタ二値化(閾値:117) 5*5四方向合成二値化(閾値:128)

四方向合成のほうが比較的線がよくつながっています。特に下の線で明らかです。

医用画像への応用2

もう1例見てみます。例として下の画像を使いました。

原画像

眼底写真は、「血管を体の外部から直接観察できる検査」という特長があります。
眼底の血管は脳血管の一部が分岐してきているので、脳内の血管の状態を推測することができるといわれています。
糖尿病・高血圧では、血管に変化が生じやすいので、目の病気以外に、糖尿病や高血圧の検査として有用です。
この写真からわかる所見としては、眼底の網膜に点状出血、しみ状出血、軟性白斑などがあります。

まず、原画像をグレースケールに変換し、さらに検出対象物(血管)が白くなるように白黒反転しました。
グレースケール
白黒反転

前の例と同様、検討においてはすべて5*5のフィルタを使うことにしました。
4種類の方向性二次微分型フィルタの出力結果を重ね合わせて単なるラプラシアン型の場合と比較しました。
5*5ラプラシアンフィルタ
5*5四方向合成
5*5ラプラシアンフィルタ二値化(閾値:110)
5*5四方向合成二値化(閾値:110)

フィルタの出力では違いが今ひとつよくわかりません。それぞれを適当な閾値で二値化すると下のようになりました。やはり四方向合成の方が線ははっきりしているようです。ただ、それも場所によって差があり、左上、左下の線は四方向合成のほうが明らかによく出ています。下部の線は四方向合成のほうがきちんと線としてつながっているようです。右上のあたりではあまり差はなく、右の部分では逆に単なるラプラシアンフィルタのほうがよく出ているようです。ただ、そのあたりではラプラシアンフィルタのほうがノイズも多く、全体としてはやはり四方向合成のほうがよく出ていると言えるでしょう。
しかし、血管の様子は処理後のほうがよく分かりますが、出血などの所見は処理後はかえってわかりにくくなっているようです。別の特徴を抽出したい場合には別の処理が必要になるようです。
しかしながら、これでは閾値の決め方に曖昧な部分が多く、本来ならノイズの量を2つで同程度になるようにするなどのことを考えなければなりません。しかし、今回は少し閾値を変えただけでも大幅に結果が変わってしまうので一番比較しやすい閾値をとってあります。